「最新が最高」を更新し続けるV6。LIVE TOUR V6 grooveライブレポートと雑多な感想

解散コンサートが終わった翌日、11月2日。

朝起きて最初に思ったことは、「あ、ちゃんと終わったんだ」ということだった。

解散発表があった3月12日の翌日は、「あれ、夢だったのかな...」と思うくらい現実感がなかったから、7ヶ月かけて彼らは私たちファンに対してお別れの準備をしっかりさせてくれたのだと思う。

 

解散前の最後のツアー「LIVE TOUR V6 groove」。9月の福岡公演を皮切りに全国計9箇所を巡り、最終日はデビュー日であり、解散日でもある11月1日に幕張メッセで行われた。

私は自宅でPCから参加。ぎりぎりで仕事を終わらせ、17:59に再生ボタンを押した。しばらくすると会場が一面暗くなり、森田剛くんの顔写真が細長い紗幕に映し出された。と、同時に聞こえてきたのは静かな剛くんの声。

「僕らは」

続いて三宅健くんの顔写真と声が現れる。

「まだ」。

30年近くにわたり、剛健コンビと称され、タッグを組んできた2人。その2人の囁きから始まったことが、まさにV6の始まりを象徴しているようだった。

6人の顔写真と声が揃うと始まったのは、最新アルバムに収録されている『雨』。しっとりとした曲調と歌声に会場の雰囲気が一気に“今の”V6で創り上げられていった。

過去の栄光に縋った曲選びではなく、最後まで“今の”V6を感じてほしい。その強い意思を、選曲からも、踊りからも、歌い方からも感じ取れた。26年間、「最新が最高」を更新し続けてきたV6。岡田くんが最後に語ったように最後の最後までV6の姿を追い求めた結果なのだろう。

とはいえ、最新曲でここまで格好良い楽曲とダンスを魅せられると、まだまだ先を観たくなってきてしまう。「最後の最後で、最高を塗り替えるなんてずるい......」ついそう思ってしまうほどだった。

MCでも、「最後」だからといってしんみりすることはなく、いつも通りの会話が進む。岡田くんが「MUSIC  FOR THE PEOPLE」でしゃがむべきところをしゃがまないでやってみたと末っ子モード全開の話をしてみたり、入所36年になる長野くんに対して剛くんが「いい加減にしろよ!なげーな(笑)」と突っ込んだり。いつも通りのV6がそこにいた。

トニセン・カミセン曲も立て続けに披露。カミセンは解散してしまうので、最後のステージだった。赤い光線が交差する。そこで歌い踊る3人。26年間歩み続けた3人のラストステージをしっかりと目に焼き付けたいと必死に画面の中の動きを追う。こちらの見る目のせいかもしれないが、いつも以上にキレのある踊りを魅せてくれたように見えた。

過去のヒット曲はメドレーで、最後のアルバムに入っている曲はフルか、フルでなくても比較的長めに。最後の最後まで、V6の新たな形を模索し続けた姿を魅せてくれた。

本編ラスト。MCで井ノ原くんが話し始める。

「1曲1曲終わるごとに、もうこの曲6人でやらないのかという気持ちになるかと思ったけど、ただただ楽しかったです」

「伝えたいことは山ほどあるんです。多分3日かけても伝わらないくらいいっぱいあるんですけど。やっぱり俺たちらしく、歌でみんなに思いを伝えたいと思います。このコンサートのためだけにできた曲です。みんなのことを思って歌います。会場の皆さん、配信を見てくださっている皆さん1人ひとりに届けばと思っています。僕たちからの手紙だと思って聞いてください。

最後になりますが、26年間V6を愛してくれて、V6についてきてくれて、いつでも笑顔を見せてくれて、本当にありがとうございました」。

そして、最後に流れてきたのは、このツアーのためにつくられた『目を閉じれば』。しっとりとした歌い出しに「最後だ」ということをどうしても意識してしまう。最後の最後にファンへの手紙のような曲を作ってくれたV6。「ありがとうと 大丈夫を君に」。そう彼らに言われたら、明日からの日常も「大丈夫」なような気がしてきてしまう。今まで6人からたくさんのエールを受け取ってきたのに、最後までエールをおくってくれるのか。大丈夫の言葉の力強さを感じた瞬間だった。

曲が終わると、手を繋いで深く一礼。こんなときにでも岡田くんの武士らしいお辞儀にふふふっと笑ってしまった。そして、井ノ原くんが「俺たちが」と叫ぶと、5人が「V6!」と続く。ああ、この言葉を聞くことはもうないのか。そんな事実に気づき、急に現実に引き戻された感覚だった。

鳴り止まない拍手に導かれ、もう一度ステージへと現れた6人。すると、スクリーンには、ファンからのメッセージと無数の「ありがとう」の声。「こういうことするんだよ」と井ノ原くんが嬉しそうに恥ずかしそうに笑う。ライブ会場で声を通して感謝を伝えられない分、音声でもちゃんと最後に声でメンバーに感謝を伝えられたことは一ファンとしても嬉しい。

そして、井ノ原くん以外の5人も一人ひとりコメントを残していく。最初に振られたのは、長野くん。目を潤ませながら、涙が流れるのを必死に耐えながら、ファンへの感謝を口にする。その姿にこっちまで感極まってしまって、何度目かわからない涙を流す。

続いて健くん。「泣きたいときは泣けばいい」。確か解散発表のときもブログで書いてくれていた。その後も何度もこうコメントしてくれていた。ずっとファンの気持ちに寄り添ってくれた健くんらしい最後の言葉。V6に三宅健さんがいてくれて本当によかったと心から思う。

次に振られたのは、岡田くん。「このメンバーだからこそやりきれた」という彼の言葉はきっと飾りのない正真正銘の心からの言葉なのだと思う。14歳で突然デビューを告げられ、自分の気持ちが追いつかないままデビュー日を迎えた岡田くん。自分を変えてくれた、優しさを教えてくれた人たちと共にずっと走ってきた。メンバーと支えてくれたファンへの感謝をまずは伝えたい。そんなことを感じさせるコメントだった。

続いて言葉を発したのは剛くん。「みなさんに惜しまれて最後を終われるというのは、僕は間違っていないと思うし、幸せでした」とコメントを締めた。「間違っていない」。この言葉を聞いて初めて彼らが次のステージへ向かうことをちゃんと納得した気がする。おそらく最初に解散を相談したであろう本人の口からこの言葉を聞けることは、この上ない幸せなんじゃないかとすら思った。最後まで剛くんらしい言葉だった。

最後に託されたのは、リーダー坂本くん。リーダーとしての不甲斐なさを口にするも、ここにまた戻ってくるという次の目標を掲げるあたり、26年間リーダーとしての役割を果たした人の言葉だと思う。井ノ原くんの言う通り、「それを言えるのが、リーダーだよ」と。最初はカミセン3人の世話をしながらメンバーを引っ張っていく役割として、途中からは一歩引いてみんなを見守る役回りとして。形を変えながらも常にV6全体を気にかけてきた坂本くん。そんな人から発せられる言葉に見ている人全員が心の中で「お疲れ様でした」と声をかけていたように思う。

そして、最後の最後の曲「95groove」が始まった。1995年から始まったV6。常にgrooveを大切にしてきた。そんな彼らが最後に歌う曲が、この曲なのはどうしたって涙が流れてしまう。「本日は最後の日で 君の隣踏んだステップ」。これを剛健並んで見せられた日には、ファンはもう涙で画面が見えませんよそりゃ。

そして最後にもう一度、「俺たちが」「V6!」と叫び、深く深くお辞儀。手を振りながらステージの裏へと帰っていった。

すると会場には6人の手が組み合わさった写真と、メンバーからのメッセージが流れる。拍手は鳴り止まず、終演から15分も続いたという。

ライブが終わっても、画面を閉じることもできず、少しの間茫然としていた。これで終わったんだ......。現実を少しずつ受け入れていった。

終わって最初に思ったことは、最後まで最高を追い求めた人たちだったということ、そして、そんな彼らのファンになれてよかったということだった。

少し前、「V6のどんなところが好きなんですか?」と聞かれた。そのときはうまく答えられなかったが、最終日にようやくわかった。常に「最新が最高」を更新し続けてくれるところなのだと思う。そのための努力を惜しまないし、努力をした先にどんな未来が待っているのかを教えてくれた。私にとっての人生の指針がV6なのかもしれない。

V6の最新を更新は一旦終わった。でも、26年間追い求め続けた経過も成果も色褪せることはない。6人での表現を模索した26年から、一人ひとりでの表現を追い求める段階へ。尊敬できる人たちだからこそ、これからどんな未来をつくっていってくれるのか楽しみで仕方ない。

V6として進化し続けた表現は、進行形のまま有終の美を飾ったのだ。これからの彼らの活躍に想いを馳せて、今回はここで文を締めたいと思う。